ゲスト対談・特集記事
連載
業務委託契約は「コスト削減」のためだけなのか?
テレワーク×業務委託契約 Vol.2Part.2 業務委託契約は「コスト削減」のためだけなのか?
次に、業務委託契約という形態について考えてみたい。
MNHは2021年にテレワーカーを導入しようと、人材サイトに業務委託者の募集を出した(*1)。
その際、サイトを運営する企業から提案されたのは、こうだ。
「業務を細かく切り出し、
外部に依頼することによって、コストの削減につながります」
つまり、MNH側のメリットの筆頭に“コスト削減”をあげたのだ。
これに関しては、もちろん一理ある。
正社員として雇用契約をすることによって、アイドルタイム、手持ち無沙汰の時間が生まれる可能性があるからだ。
例えば経理。月末月初は忙しいが、月中は正直それほど忙しくない。工場など一部の仕事をのぞいて、ほとんどの仕事の作業量には波があるのだ。
しかし、雇用契約は基本、時間管理だ。
例えば、毎週20時間と決めたら、いつでも20時間。
10時間で仕事が終わったなら、本来帰ってもよいはずだ。しかし「雇用」してしまうと、忙しくない時期でも、その人は20時間そこにいる。そして、今しなくてもいい作業を何となくしている。それを減らすという意味では、確かにコスト削減だろう。
しかし本当にそれだけなのか?
雇用契約にこだわると、働く自由度が失われる
そもそもMNHは、企画屋だ。
分かりやすく言えば、かりんとうや、スナック、お米のデカフェなど、身近な食品を中心に商品企画・開発をしている会社である。これらものづくりを通じて、働く場がない人にやりがいをもって働く環境をつくっているのだ。
当然、社員には企画職がいる。
しかし、雇用契約で雇うと、窮屈なことが起こるのも事実なのだ。
企画をやったことがある人ならば分かると思うが、調子のいいときはたくさん出るアイデアも、コンディションやテーマによっては何も浮かばないこともある。1日で良いアイデアがひらめく時もあれば、何日経ってもうんうんうなっている時もある。
なんなら、職場だけではなく、いつでもどこでもアイデアを探していると言える。
つまり、本来、企画職を時間で管理すること自体、ナンセンスなのだ。
また、前章で述べた「働きたいけど働けない女性」を考えてみたい。
仮に彼女らを雇用契約で雇おうとすると、どんな不具合が起こるだろうか?
例えば、経理職に、子育て中の女性を正社員で雇うとする。
当然タイムカードで勤怠管理をすることになる。
彼女が「子供が熱をだした」と1日休んだとする。夕方になって熱がひいたので「今から夜にかけて業務を終わらせたい」などと言ってきても、こちらは(深夜手当などもろもろの理由から)「やめてください」と言うしかないのだ。
さらに、学校の保護者会が午前中にあるとする。
「パソコンを持ち帰って合間に仕事をやりたい」と言われても、NOと言うだろう。
これは意地悪でも何でもなく、雇用契約においては、させてはならないからだ。
雇用契約はどこまでいっても、時間管理だから。
つまり、雇用契約にこだわるあまりに、働く自由度が失われることが多々あるのだ。
いろいろな人たちの知恵と能力を借りられる手段
そんな想いがあった私は、業務委託契約を、働き方の1つとして良いと思ったのだ。
お伝えしたように、MNHは働く場を持てない人の環境を作るために、ビジネスをしている。
例えば障がいがある方やひきこもりの方の働く場など。つまり、常識に捉われずにもっと新しい働き方を模索していきたい、という想いが根底にある。
そこで、私はこう考えた。
業務委託は「いろいろな人たちの知恵と能力を借りられる手段」なのではないか、と。
例えば、先ほどの経理の女性が、仮に業務委託だったらどうだろう。
子どもを寝かせた後などに業務をやることも可能ではないか?
保護者会のある日にも仕事を進められるのではないか?
これが工場など、リアルでないといけない現場なら致し方ない。
しかし、そうではない現場では、むしろ業務委託のような働き方のほうが理にかなう部分が多いのだ。
繰り返すが、日本には働きたくても働けない人が533万人(*2)いる。
企業は企業で「人手が足りない」と声をあげている。
しかし、物事の見方を変えれば、つまり、雇用形態にこだわらなければ、実は働き手はたくさんいると言えるのではないか。
(*1)2021年11月より、株式会社アイドマ・ホールディングスが運営する『ママワークス』を活用してテレワーカーを募集し始めた。
(*2)総務省は2020年8月、働きたくても働けない「未活用労働」の状態にある人が4~6月期に533万人いたと発表した。