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場所を問わずにスキルを活かせるテレワーク

テレワーク×業務委託契約 Vol.1 アイキャッチ画像

Part.1 場所を問わずにスキルを活かせるテレワーク

テレワークは、テレ(Tele:遠い)とワーク(Work:仕事)という意味を持ち、会社から離れた場所で働く勤務形態をいう(*1)。

「長年続けてきた仕事の方法を変えられない」「働く姿がリアルに見えず不安」などの理由で、日本ではなかなか浸透していなかった。

しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大で、テレワークを余儀なくされた人の多くが、コロナ禍を経て気づいたことがある。それは、「離れていてもほとんどの仕事はできてしまう」ということではないか。

 

———現在MNHでは、正社員の他に、たくさんの「テレワーカー」が働いている。

秘書、会計、人事などのバックオフィス職をはじめ、デザイナーやライターなどのクリエイティブ職まで、約40人と契約している。常時稼働しているテレワーカーは15人ほど(2024年5月現在)。

彼らがいないと仕事がまわらない、といっても過言ではなない。
テレワーカーたちは、MNHの今を全国各地で支えてくれている
もともとは社内の組織改革(*2)のために導入しはじめたのだが、もう1つ大きな問題意識があった。

 

出産・子育て・介護…
キャリアを中断せざるを得ない女性たち

日本において、働きたいけど働けない人は、533万人いるという(*3)。
ここには、特に子育てをしている女性が多く含まれている。

日本では、出産から子育ての時期に、女性がその役目を担う場合が多い。世界各国と比べてもその傾向は強いだろう。

もちろん「子供が3年生まで時短勤務ができる」というような大手企業もある。しかし、残念ながらそれは一部だ。

「子供が熱を出したので帰る」という女性を、温かく見守れない職場も多い。
「仕事を押し付けて帰っているのではないか」といった後ろめたさや心苦しさが、彼女らを苦しめ、キャリアを閉ざしてしまうパターンも少なくない

課題はいろいろなところにある。世間の認識もあるだろうし、例えば保護者会を昼間に開催するような、学校側の問題もあるだろう。

一方で、子どもが少し大きくなってくると、「もう一度働きたい」と思い立つ女性も多い。
しかし10年のブランクを背負ってしまったような女性が、働く場を選べないということは往々にしてある。

例えば、過去に経営企画職でバリバリ働いていた女性が、もう一度働きたいと思うとする。
自分の近辺でそれと同様の職がないとする。学生アルバイトと同等の単純作業しか選択肢がないと、「自分の培ってきたものが活かせない」と感じ、結局「働かなくてもいいか」と諦めてしまう人も少なくない。

 

一方日本では、介護離職も年々増えている。

そもそも、介護の課題は社会問題化されていない部分も多く、例えば介護中の人が給付金を受給できる権利は、93 日と少ない(*4)。

その上、もっと大きい問題がある。

都市部で仕事をしている人の多くは地方から出てきた人だ。そのため、家族の介護が必要になると、故郷に帰らなければならない。すると、地方にはこれまでのキャリアを活かせる転職先がないことがほとんどだ。つまり介護離職後にキャリアが途絶えてしまう。

そして、この介護を担っているのも、ほとんどが女性たちだ。

 

旦那さんが転勤族というパターンもある。
例えば、金融系・商社・大手メーカー・公務員・ゼネコンなど、転勤が多い職種の旦那さんを持つ女性たちだ。

旦那さんについていき、新しい土地にきた女性が、「とにかくアルバイトでもいいから」と仕事を始めたとする。職場にも徐々に慣れてきて、近所にも友達ができたりする。「この土地も悪くないな」と思い始めた矢先に、「はい、転勤です」となってしまう。

その女性は、次の土地で0から人間関係を作り直さないとならない

引っ越しごとに仕事を変えるため、仕事内容にも連続性がないだろう。必然的にキャリアやコミュニティが途切れがちだ。こういったことが転勤族の家庭の、そこここで起こっている。

このように、自分の意に反して、キャリアを継続できていない女性たちがたくさんいる。

それを救う1つの方法が「テレワーク」ではないか、と考えているのだ。

 

場所を問わず、今までのスキルを活かせる

テレワークの良い点は、働く場所を問わないところだ。

自分の住んでいる地域の中だけで仕事を探そうとすると、その選択肢も狭まってしまう。しかし、全国にある仕事の中で選べる、という前提なら、選択肢はかなり広がるだろう。

一方、我々企業側から見てもメリットは大きい。
都内近郊で適任者が探せなかったのに、「日本全国」に目を向けたら見つかった、という経験が私にもたくさんある。

このように出社型にこだわらなければ、双方にとって可能性が一気に広がるのだ。

 

さて、ここで「リアルではないとできない仕事」についてもお話しておきたい。

例えばMNHでいうと、工場・物流・企画などの職種だ。つまり、そこに「もの」が介在する仕事である。それ以外は、特別な例を除いて、離れていても進行できると思っている。

特に日本においては、「目の前にその人がいないとダメだ」という思い込みを持っている人が多い。しかし、そんな想いを持つ人に「その人と実際に1日にどれくらい話すの?」と問いたい。

例えば、企画職の人と、経理職の人が会社にいたとする。
職場で2人はどれくらい会話をするのか。たまに請求書の確認などで会話をするかもしれない。しかしそれは、本当にリアルでないとダメなやり取りだろうか? 

そのような観点で見てみると、テレワークでも成り立つ仕事は、想像より多いのではないのだろうか。

 

(*1)テレワークは、情報通信技術を活用し、時間や場所の制約を受けずに、柔軟に働く形態を指す。「リモートワーク」は、社員が通常のオフィスから離れた場所で働く勤務形態で、テレワークとほぼ同じニュアンス。

(*2)中小企業は従業員数に限りがあり、人事交流や人事異動ができないため、他と比較したり刺激をもらったりすることで自分をスキルアップさせる機会が少ない。それが社員、ひいてはMNHの成長にマイナスだと考えていた。

そこで社員の成長を促すために、特定の業務に知見を持っているテレワーカーと協業する方法を採用した。つまり、大手企業が人事異動などで対策できることを、テレワーカー導入で実現しようと考えていた。

(*3)総務省は2020年8月、働きたくても働けない「未活用労働」の状態にある人が4~6月期に533万人いたと発表した。未活用労働者は、➀就業時間が週35時間未満で、さらに働きたい就業者 ②1カ月以内に求職活動をしている失業者 ③求職活動をしていないが就業を希望している人などの潜在労働力人口を合算した指標。

(*4)要介護状態の家族1人につき通算で93日分の給与の一部が支給される。一方、育児休業給付金は子どもが1歳6か月になるまで受けられる。

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