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MNHスポーツはパラスポーツ×生涯スポーツ。原点は誰もが楽しめること

MNHスポーツへの想い vol.2 アイキャッチ画像

Part.2 MNHスポーツはパラスポーツ×生涯スポーツ。原点は誰もが楽しめること。

<取締役社長 小澤尚弘インタビュー>

 

「MNHスポーツ」として再スタートを切ることが決まると、不思議なもので、私の中でいろいろなアイデアが湧き出てきた。

MNHでは障がい者の働く福祉作業所と連携してものづくりを行っている。

障がい者のためのスポーツであるパラスポーツを取り入れるまでに、時間はかからなかった。

 

MNHのボッチャクラブをつくろう

会長室での談話中に、私と会長は意気投合した。
早速ボッチャを習得し、環境づくりを進めている。

このボッチャ(*1)というスポーツ。

もともとは重度障がい者の方のためにつくられたスポーツだが、子どもでも分かる単純なルールで、障害の有無に関わらず世代を超えて楽しめる

平日の昼間でも参加できる高齢者の方が、笑ってボールを投げる姿が目に浮かんできた。

福祉作業所の障がい者の方の感触も悪くない。

日常的に彼らと接している私は、「うちでパラスポーツをやるんだけど…」と水を向けてみた。

実は彼らは、休日に遊びに行く場が少なくストレスを感じていたのだった。

障がい者の方の活力となれば、MNHとしても本望である。そんなふうに、MNHの持っている資源を組み合わせて、シナジーを生み出せそうな予感がしている。

 

一方で、いま国民に推奨されている生涯スポーツ(*2)というものがある。

どんな世代の人でも、一生涯にわたって楽しめる点が魅力だ。

 

ちなみにMNHが取り組んできた「フェンシング」も、今や生涯スポーツとして位置づけることができるだろう。あまり知られていないが、70歳以上でも参加できる世界選手権(*3)もあり、70代の日本選手の活躍も注目されている。

既存の競技スポーツのなかには、若い人がどうやっても勝ってしまうスポーツが多い。

陸上や、力勝負のたぐいだ。

例えばランニングをやったことのない高校生と、ランニングに励んでいる70歳。

これでは、どう転んでも高校生が勝つのだ。

かたや、フェンシングの勝敗のポイントは「駆け引き」である。自分がつきにいけば、つかれるリスクがある。そこの駆け引きなので、若いから勝てるというものではない。

このように年齢に垣根はなく、何歳からでも始められるのがフェンシングの良さなのだ。

 

さて、ここでMNHスポーツの母体である、MNHがやっていることに触れたい。

分かりやすく言えば、かりんとうや、スナック、お米のデカフェなど身近な食品を中心に開発している会社である。一番の特徴は、これらものづくりを通じて、働く場がない人にやりがいをもって働く環境をつくっていること。

日のあたらない場に光をあて、誰もが生きがいをもって生きられる社会を目指すMNHのビジョンと、多様性を認めあうパラスポーツや、全世代型の生涯スポーツ。これらはオーバーラップするところが多いのだ。

 

つまりMNHが扱っていきたいスポーツは、パラスポーツ×生涯スポーツといったところだろうか。

さらに、MNHスポーツのこだわりは「誰もが楽しめる」こと。

この点で、私の経験のなかに強烈なイメージが残っている。

ちょっと話がそれるかもしれないが、皆さんとぜひ共有したいと思う。

 

奄美大島で見た、スポーツを楽しむおじいちゃんおばあちゃんの笑顔

私は数年前、ひょんなことから、奄美大島の小学校の運動会に顔を出していた。

若い人が流出し高齢化が進んでいるこの島で、びっくりするような光景に出くわしたのだ。

奄美の小学校では、運動会ともなると、地域のお年寄りがどさっと集まってくる。
応援に、ではなく、おじいちゃんたちが「選手」なのだ。
子どもが10人くらいなのに、おじいちゃんたちは50人以上。みんなやる気満々だ。

おじいちゃんたちが見つめる先にあるのは「一升瓶」。
ひとりずつ順番に駆けて行って、一升瓶に水を入れる。
「はやく満杯になったチームが勝ち」というルールだ。

この一升瓶に水を入れるのには絶妙なさじ加減が必要で、慌てるとこぼれるし、ゆっくり過ぎても溜まらない。おじいちゃんたちはしゃかりきになりながらも、終始笑顔にあふれている。周りも「なにやってんだ~!!」と声援を送りながらも、見ているこっちが吹き出してしまう。

 

ーーこのとき私は、「こういうのがいいよな」としみじみ思った。

運動神経のよい人や若者だけが勝つのではなく、老若男女誰でも楽しめる 子どもでもすぐに覚えられるような単純明快なルール かつ勝敗もあるので、ひとりで体操なんかをするよりも、俄然モチベートされる


これほどまでに人を惹きつけ、活力になるものはあるだろうか?
そしてこれがスポーツ本来の良さであり、原点ではないだろうか。

 

願わくば、ここへ立ちもどりたい。

MNHスポーツでは、こんなあり方を大切にしたいのだ。

 

パラスポーツや生涯スポーツという概念を置いておいても、MNHスポーツの真髄はここにあることを、強調しておきたい。

 

(*1)ボッチャ重度脳性麻痺者、あるいは重度障がいが四肢にある人のために考案されたヨーロッパ発祥のスポーツで、パラリンピックの正式種目でもある。ジャックボール(目標球)と呼ばれる白いボールに、赤・青のそれぞれ6球ずつのボールをいかに近づけるかを競う。

 

(*2)生涯スポーツ:健康づくりや社交の場を目的として「生涯を通じて、いつでも、どこでも、誰でも」親しめるスポーツのこと。

 

(*3)公益社団法人日本フェンシング協会が主催する世界ベテラン選手権選では、年齢区分を50歳~59歳、60歳~69歳、70歳以上の3種としている。

 

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